育成就労制度とは?技能実習制度に代わる新たな外国人労働者受け入れの枠組み
- ブイエヌサービス
- 2024年12月27日
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日本では、少子高齢化や労働力不足が深刻な問題となっており、それを解消するために外国人労働者の受け入れが進んでいます。その一環として、従来の「技能実習制度」に代わり、2027年に「育成就労制度」へ移行する予定です。この新制度は、外国人労働者が日本で働きながら技能を習得し、長期的なキャリア形成を支援することを目的としています。
この記事では、育成就労制度の概要や技能実習制度との違い、特定技能1号への移行、受け入れ可能な職種、在留期間、そして育成就労制度における試験要件について詳しく解説します。
目次
育成就労制度は、外国人労働者が日本で働きながら必要な技能を学び、長期的に日本国内でキャリアを形成できるよう支援するための制度です。従来の技能実習制度は、主に発展途上国への技術移転を目的としていたのに対し、育成就労制度は日本の労働力不足を補うことに重点を置いています。加えて、民間の職業紹介事業者は当分の間、この制度には関与せず、政府や指定機関が制度運営を担うことが特徴です。
技能実習制度と育成就労制度には、目的や受け入れ方において大きな違いがあります。以下に、両制度の主な違いを比較表にまとめました。
このように、技能実習制度では発展途上国への技術移転が重視され、日本滞在は一時的なものでしたが、育成就労制度では日本での長期就労を前提とし、労働者のキャリア形成を重視しています。
育成就労制度を修了した外国人労働者は、その後「特定技能1号」への移行が可能です。特定技能1号は、さらに長期的に日本での就労を認める制度で、育成就労制度で習得した技能を引き続き活かせる職種で働き続けることができます。
育成就労制度の在留期間は基本3年で、最長5年間です。その後、特定技能1号に移行することで、さらに最長5年間滞在可能となり、育成就労制度と特定技能1号を合わせると、合計で最大10年間の滞在が可能です。
育成就労制度で受け入れ可能な職種は、特定技能1号と同様に、現在日本で人手不足が深刻な16の分野になると考えられます。まだ未定ではありますが、特定技能1号は以下の職種です。
これらの職種は、日本の産業において特に人材不足が深刻な分野であり、育成就労制度を通じて習得した技能を活かす場として適しています。
育成就労制度を修了して特定技能1号へ移行するには、2つの試験に合格する必要があります。
日本国内で必要とされる技能を持っていることを証明するために、技能検定3級または特定技能1号評価試験に合格する必要があります。
特定技能1号に移行する際には、日本語能力試験(JLPT)N4レベルまたはA2相当の日本語能力が必要です。N4レベルは、日常的な会話や文章の理解ができる程度の能力を指します。
また、育成就労制度を開始する段階では、N5レベルの日本語能力が求められます。これは、簡単な会話や読み書きができる基礎的なレベルで、職場での基本的なコミュニケーションに役立ちます。
育成就労制度における在留期間は、原則として3年間と定められています。この期間中、外国人労働者は職場で実務を通じて技能を身につけ、日本語能力の向上にも取り組みます。そして3年間の就労を終えた後、特定技能1号への移行を目指して必要な試験を受けることになります。
ただし、試験に一度で合格できなかった場合でも、最長1年間の在留延長が認められる制度となっています。この延長期間を活用して再チャレンジが可能なため、外国人労働者にとっても安心してステップアップを目指せる仕組みとなっています。
また、この制度は単に技能を教えるだけでなく、「日本で長く働き続けられる人材を育てる」という観点から設計されています。そのため、対象となる職種は、特定技能制度と同じ分野に限定されています。これにより、育成就労制度を経て特定技能1号・2号へとスムーズに移行できる流れが整備され、現場の即戦力となる人材の育成・確保が可能になります。
さらに、育成就労制度では、条件付きではありますが転職(企業間の移動)も認められる予定です。これは、外国人労働者の権利保護や職場環境改善を促すためのもので、従来の技能実習制度よりも柔軟な仕組みとなっています。
※特定技能2号に移行できる職種は現時点で一部に限られますが、将来的に対象が拡大される可能性があります。特定技能2号に移行できれば、在留期限の制限はなくなり、家族の帯同も認められます。
今回は、2027年に施行予定の「育成就労制度」について解説しました。この新制度により、外国人労働者は日本で働きながら技能を習得し、特定技能1号へと移行することで、最大5年間日本で就労することが可能になります。特に16分野にわたる職種での活躍が期待されており、労働力不足を補う重要な制度となるでしょう。
企業にとっても、この制度は労働力確保の面で大きなメリットとなるため、外国人労働者が働きやすい環境づくりやスキルアップの支援を行うことで、持続可能な人材活用を実現することが期待されます。