【運送業2024年問題の対策】外国人ドライバーを即戦力化する言語サポートとルート最適化術
- ブイエヌサービス

- 9月22日
- 読了時間: 7分
更新日:9月23日

目次
2024年4月から施行された残業時間の上限規制、いわゆる「2024年問題」。運送業界に身を置く経営者・管理者様にとって、この規制はドライバー不足の深刻化と相まって、事業の根幹を揺るしかねない大きな課題ではないでしょうか。
「荷主の依頼に応えたいが、走れるドライバーがいない…」 「若手が入らずベテラン頼りの現状から脱却できない…」
こうした状況を打開する一手として、2024年4月から新たに始まった在留資格、特定技能「自動車運送業」に大きな期待が寄せられています。しかし、いざ採用を検討しようとすると「業務指示や荷主とのやり取りなど、言葉の壁はどうする?」「日本の複雑な道を土地勘のない外国人が運転できるのか?」といった新たな不安が生まれるのも事実です。
ご安心ください。その「言葉」と「地理」の壁は具体的な対策とツールの活用で乗り越えることが可能です。本記事では、外国人ドライバーを即戦力化し、2024年問題の荒波を乗り越えるための具体的な方法を徹底解説します。
多くの経営者様が外国人ドライバーの採用に踏み切れない理由は、突き詰めると以下の2つの壁に集約されます。
言語の壁: 日々の業務指示、荷主や納品先とのコミュニケーション、そして事故や故障といった緊急時の連絡。専門用語も多く、正確な意思疎通が求められる場面で、日本語でのコミュニケーションに大きな不安を感じます。
地理・ルールの壁: 入り組んだ日本の道路、地域ごとの交通事情、そして一時停止や歩行者優先といった日本特有の交通ルール。これらを正確に理解し、安全かつ効率的に配送業務を遂行することへのハードルです。
これらの壁を一つひとつ解消していくことが、採用成功への最短ルートです。

言葉の壁は、少しの工夫とツールの活用で着実に低くすることができます。明日からでも実践できる4つの方法をご紹介します。
①指示の基本は「やさしい日本語」と「指示書の見える化」
まず基本となるのが、管理者からドライバーへの伝え方の工夫です。「伝票通りに積んで、15時までにA社に納品後、B社で集荷して帰社」といった一文での指示ではなく、「やさしい日本語」を意識しましょう。
荷物の写真、納品先の地図、作業手順のチェックボックスなどを盛り込んだ指示書を用意すれば、口頭での指示を補い、認識のズレを防げます。
②現場で役立つ!外国人ドライバー向け翻訳アプリ・ツールの活用
スマートフォンの翻訳アプリは、今や非常に高性能です。特に音声入力・音声読み上げ機能は、現場でのコミュニケーションに絶大な効果を発揮します。 荷主から予期せぬ質問をされた際や、自分の意思を伝えたい際に、ドライバー自身がアプリを使って対応できるよう、事前に使い方をレクチャーしておきましょう。
③荷主・納品先との円滑なコミュニケーション対策
納品先でのコミュニケーションは、パターンが決まっていることがほとんどです。 「こんにちは。株式会社ブイエヌサービスの〇〇です。」「サインはこちらにお願いします。」といった定型文を、日本語と相手の母国語で併記した「コミュニケーションカード」や「スマホのメモ機能」に準備しておくだけで、ドライバーの心理的負担は大きく軽減されます。
また、運行管理者から納品先へ「本日は弊社の外国人ドライバー、〇〇がお伺いします」と事前に一本連絡を入れておくことも、非常に有効な配慮です。
④もしもの時に備える「緊急時対応マニュアル」
最も重要なのが、事故・故障・体調不良といった緊急時の備えです。 パニック状態でも落ち着いて行動できるよう、イラストを多用したマニュアルを作成しましょう。
状況別(事故、故障など)のフローチャート
「警察(110番)」「救急(119番)」「会社(運行管理者)」の連絡先リスト
現在地を伝えるためのスマートフォンの位置情報共有方法
これらをラミネート加工して車内に常備しておけば、万が一の事態にも迅速に対応できます。
経験の浅いドライバーにとって、最適なルート選択は困難です。この「地理の壁」は、テクノロジーの力で解決できます。
なぜ今、ルート最適化が必要なのか?
ルート最適化は、単にベテランの勘に頼った運行から脱却し、燃費改善や労働時間短縮を実現するだけではありません。新人や外国人ドライバーにとっては、道に迷う不安を解消し、運転そのものに集中できる環境を作ることで、安全性を高め、即戦力化を加速させるという重要な役割を果たします。
土地勘ゼロでも安心!配送ルート最適化システムの導入メリット
現在、様々な企業から「配送ルート最適化システム(アプリ)」が提供されています。これらのシステムを導入すれば、パソコンやタブレットで複数の配送先住所を入力するだけで、AIが最適な巡回ルートを瞬時に計算してくれます。
納品の時間指定
トラックの車高・車幅
一方通行やUターン禁止
といった現場の制約条件を考慮したルートを作成できるため、ドライバーは経験に関わらず、効率的で安全な運行計画に沿って運転することができます。
動態管理システムとの連携で、リアルタイムの「遠隔サポート」を実現
さらに、「動態管理システム」を併用すれば、各車両が今どこを走っているかを事務所のパソコンでリアルタイムに把握できます。 これにより、ドライバーから「道に迷った」「渋滞で動けない」といった連絡があった際に、管理者が地図上で状況を確認しながら、「次の交差点を右折して」「〇〇線のルートに迂回して」といった的確な指示を遠隔で行うことが可能になります。
これらの対策を講じる上で、採用の法的根拠となる特定技能「自動車運送業」の基本を理解しておきましょう。
対象となる3つの業務区分
特定技能「自動車運送業」では、以下の3つの業務に従事するドライバーの採用が可能です。
トラック輸送(貨物自動車運送事業)
バス輸送(一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業)
タクシー輸送(一般乗用旅客自動車運送事業)
受け入れ企業の主な要件
道路運送法に基づく事業許可を得ていること。
国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」に加入し、必要な協力を行うこと。
日本人と同等額以上の報酬を支払うなど、労働関連法令を遵守すること。
外国人材側の主な要件
従事する業務に必要な日本の運転免許(トラックであれば準中型・中型・大型免許など)を保有していること。
自動車運送業分野特定技能1号評価試験(技能試験・日本語試験)に合格すること。
本記事では、運送業における外国人ドライバー採用の「言語」と「地理」という2つの大きな壁を乗り越えるための具体的な方法を解説しました。
言語の壁: 「やさしい日本語」「見える化した指示書」「翻訳アプリ」「緊急時マニュアル」で乗り越える。
地理の壁: 「ルート最適化システム」と「動態管理システム」で、経験に依存しない運行体制を築く。
これらの対策は、一見すると外国人ドライバーのためだけのものに思えるかもしれません。しかし、その本質は**「誰にとっても分かりやすく、働きやすい職場環境の構築」**であり、業務の標準化による生産性向上、そして日本人新人ドライバーの育成にも直結する、会社全体への投資です。
2024年問題という大きな課題に直面する今こそ、テクノロジーと人の工夫で不安を解消し、新たな担い手である外国人ドライバーを温かく迎え入れ、未来を拓くパートナーとして共に歩み始めてはいかがでしょうか。


